グループについて
診療
呼吸器・アレルギー診療がカバーする領域は広い。当科では、重症喘息に合併する鼻副鼻腔疾患や皮膚疾患、あるいは相互に合併する肺癌、COPDや間質性肺炎などについて、疾患単位ではなく、全人的な最適治療を念頭において、呼吸器・アレルギー総合診療を行うように心がけている。このため、専門外来は設けず、全医局員が全領域に対応している。
当科では、歴代の教授が喘息診療ガイドラインの作成に深く関与してきており、喘息領域への貢献度が高い。重症喘息の患者数も多く、生物学的製剤の使用例数は日本でも有数である。全ての生物学的製剤、気管支鏡による気管支温熱療法を整備し、呼気一酸化窒素濃度、血中好酸球数、血清IgE値、呼吸機能、画像についての検査を丁寧に行い、適切な治療選択を行っている。薬剤部の協力を得て確立した、北、板橋、豊島、練馬区の薬局との吸入指導の病薬連携システムでは、すでに1000 名を超える指導実績がある。
慢性閉塞性肺疾患 (COPD)では、喘息とのオーバーラップを含めた正確な診断のもと、最新の薬剤による治療を行っている。間質性肺炎については、抗線維化薬の使用例数は日本でも上位に位置し、豊富な診療経験を有する。肺癌においては、がん拠点病院となって 10 年以上が経過し、入院患者の多数を肺癌が占めている。腫瘍内科とも連携して最新の治療を行い、特に呼吸器疾患併存肺癌では、質の高い医療を実践している。初診から治療開始まで1ヶ月以内を目指して気管支鏡検査を行っている。
これらに加えて、2020年度以降はCOVID-19関連診療が加わった。当科は専門家チームとして診療に貢献し、感染症内科、総合内科や救急科と協力しながら全病院体制でCOVID-19診療が行われている。アレルギー疾患領域ではERと緊密に連携し、アナフィラキシー症例は年間50例近くが当科を受診している。
教育
呼吸器・アレルギー診療は、呼吸困難、咳嗽、喀痰、血痰など、プライマリケア診療にも必須の内容を含んでおり、学生教育における責務は大きい。医学部5年生の全学生に対するBSLでは、伝統的に11枠のクルズスをスタッフ総出で行っている。COVID-19蔓延後もWebを活用した実習体制を確立している。クルズスを維持しバーチャル症例を含めた実習で、教育の質を低下させることなく、体制を進化させつつある。
研究の紹介
1. 喘息基礎研究: 増悪の最大の原因は感冒などのウイルス感染であり、その機構について検討している。ウイルス成分による気道上皮細胞死機構(小泉: Allergology International(AI)2016)、ウイルス感染増悪マウスモデルにおけるロイコトリエンの関与(宇治野: AI 2017)に続き、マスト細胞のウイルス感染における役割も検討中である。また、ヒト末梢血好酸球を高純度で分離する手法が安定して稼働しており、好酸球生物学については伝統的に多くの報告を行ってきている。好酸球と神経系のクロストークについてin vitro 研究を継続している (長瀬: 基盤研究)。
2. 喘息臨床研究: 環境再生保全機構から競争的資金を得て、帝京大学を主施設とする 650 例の多施設コホート研究を継続し、炎症タイプ別の増悪因子の同定を目指している。
抗 IL-5 抗体についての臨床的検討も、帝京大学を主施設とした多施設共同研究を終了し、galectin-10が治療後に低下することを報告した (小林: Asia Pacific Allergy 2021)。さらに、都内私立大学でコンソーシアムを組み、生物学的製剤の医師主導研究を手分けして進めている。
日本人重症喘息(AI 2019)、IL-5に関するレビュー (AI 2020)、重症喘息の疫学(AI 2020)、IL-5標的治療についてのネットワークメタ解析(J Allergy Clin Immunol 2019)、日本における実臨床研究 (Clin Transl Allergy, 2021 in press)など、重症喘息に関する臨床的検討を精力的に行っている。また、日本呼吸器学会の協力を得て、喘息を含めた呼吸器疾患合併COVID-19の予後に関する全国調査も行った (Respir Invest 2021)。
3. 肺線維症病態の解明: 当研究室伝統の、シリカ単回投与モデルの長期解析を行い、IL-9 を主要な因子として同定した(杉本、鈴川: Am J Respir Cell Mol Biol 2019)。杉本は、本テーマを発展させるべく、科研費 (若手研究)を2020年に取得し、検討を継続している。