TAVI
大動脈弁狭窄症の治療に新たな可能性。
当院ではTAVIでの治療に積極的に取り組んでいます。
TAVIの対象患者さん
- 80歳以上の症状を伴う大動脈弁狭窄症の方
- 80歳未満で開胸手術に何らかのリスクがある大動脈弁狭窄症の方
- 年齢にかかわらずTAVIをご希望される大動脈弁狭窄症の方
- 透析中の大動脈弁狭窄症の方
- ご希望を考慮し、心臓外科やハートチームと相談の上決定します。
新しい治療法「TAVI」とは
大動脈弁狭窄症とは心臓の出口にある大動脈弁が加齢や動脈硬化によって狭くなる病気です。
進行すると失神や心不全、さらには突然死を起こす疾患です。
通常は開胸といって胸を切り開いて心臓を停止させて大動脈弁を人工の弁に取り替える「弁置換術」を行います。
しかし大動脈弁狭窄症の患者さんのなかには、高齢により体力が低下していたり、他の病気を持っているために、開胸手術が難しい患者さんも多くいらっしゃいます。
エドワーズ社提供
大動脈弁狭窄症の症状
そのような患者さんにとって、新しい治療の可能性を開いたのが、経カテーテル大動脈弁植え込み術(Transcatheter aortic valve implantation: TAVI)です。TAVIは、重症の大動脈弁狭窄症に対する新しい治療法で、胸を全く切開しない、または大きく切開しなくて済み、また従来の弁置換術のように心臓を停止する必要がなく人工心肺を使用しなくて済むことから、患者さんの体への負担が少ないのが特長です。
TAVI 人工弁(エドワーズ社提供)
TAVIに現在日本で使用している人工弁はウシの心膜で作られた生体弁です。 このため、機械でできた弁とちがって血をさらさらにするワーファリンなどの抗凝固薬を必ずしも内服する必要はありません。
TAVIの方法
TAVIには、2通りのアプローチがあります。太ももの付け根の血管から挿入する「経大腿アプローチ」と肋骨の間を小さく切開し、心臓の先端(心尖部)からアプローチをする「経心尖アプローチ」です。
TAVIは、術後1週間程度で退院が可能となります。退院後はすぐに元の生活に戻ることができます。しかも大動脈弁機能は大幅に改善していますから、治療前にはできなかった色々な活動が可能になります。
これだけ聞くと非常にいい治療ですが、まだ新しい治療のため長期の安全性が確認できていないことや手技に伴う合併症が発生することもあります。現時点ではTAVIは高齢のために体力が低下している患者さんや、その他の疾患を持つ患者さんなどが対象の治療法で、そのほかの体力がある比較的若年の患者さんには従来通りの開胸手術をお勧めしております。
TAVIカテーテルイメージ
人工弁設置イメージ
TAVIの診療体制「ハートチーム」
TAVI治療は、循環器内科のカテーテル治療専門医、心臓血管外科医、麻酔科医、心臓画像診断専門医やその他専任看護師や臨床工学技士、放射線技師、事務職員などが、それぞれの専門分野の知識や技術を持ち寄って、患者さんにとって最適と思われる治療法を選択し、治療を行うことではじめて可能になります。
このTAVI治療を担うグループを「ハートチーム」と呼びます。
このようなハートチーム体制を整えている施設が選ばれています。
また、当院には、TAVI指導医(proctor)資格を持つ渡邊雄介医師が在籍しています。
ハイブリッド手術室
TAVIは、ハイブリッド手術室と呼ばれる高機能の手術室において治療を行います。
ハイブリッド手術室とは、手術台と心・脳血管X線撮影装置を組み合わせた治療室のことで、手術室と同等の空気清浄度の環境下で、カテーテルによる血管内治療が可能です。
TAVIを行うには、高機能のハイブリッド手術室を有することが必要であり実施できる施設が限られています。
当院では2013年よりハイブリッド手術室の運用を開始し、2014年2月からTAVIを開始しました。2024年8月現在で約1,400人の方にTAVIを行いました。
TAVIに関するよくある質問
- Q治療費はどれくらいかかりますか?
- ATAVI治療は健康保険の適用です。
医療費は約560万円(後期高齢者で約56万円)ですが、自治体の高額医療費制度を利用すると約10万円とさらに、費用の負担を少なくすることが可能です(額は自治体によって異なります。
尚、食事代、個室代は別途必要になります)。
尚、人工弁なので身障者1級に相当します。 - QTAVIは希望すれば受けることができますか?
- ATAVIは高齢のために体力が低下している患者さんや、その他の疾患を持つ患者さんなどが対象の治療法です。
なるべく患者さんの希望にそった治療を行うように努めますが、ハートチームで話し合い、一番よい治療を提供いたします。
また、先天性の2尖弁の患者様も治療可能となりました。 - QTAVI治療について相談したい場合はどのようにすればよろしいでしょうか?
- A当院ではTAVIを含めた心臓弁膜症の専門外来(毎週土曜日)を設置して、セカンドオピニオンや患者様に合った治療がスムーズに行える体制を整えております。
こちらにご相談ください。お電話で外来の予約をすることが可能です。
帝京大学医学部附属病院
地域医療連携室
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