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リウマチ・膠原病

関節リウマチ

関節リウマチとは

多くの関節に炎症が起こり、関節が腫れて痛む病気です。特に、関節の中の滑膜という成分が増殖します。その結果、関節周囲の骨がこわれ(骨びらん)、進行すると関節の変形や機能障害が起こります。

症状と徴候

関節リウマチには、関節の症状と関節以外の症状があります。

関節の症状

おもに手指(指の付け根や指先から二番目の関節)、手首、足趾の関節に痛みと腫れが起こります(図)。触れると熱感があることもあります。肘や膝の関節にも痛みと腫れがみられます。最初は、関節の痛みは一つあるいは少数の関節から始まりますが、次第に左右の同じ部位の関節に起こることが多いです。関節の痛みは毎日、長期間にわたって続きます。 関節を動かし始めるときに動かしにくく、使っているうちにだんだん楽に動かせるようになります。朝、起きたときに最も強く感じるので「朝のこわばり」とよばれます。昼寝をしたり、長い時間椅子に坐っているなど長時間にわたって関節を動かさなかった後にもこわばりはみられます。 病気が進行すると、関節の骨や軟骨が破壊されて関節の変形が起こり、関節を動かせる範囲が狭くなります。頭を支えている首の骨(頸椎)の関節に問題が起きると後頭部が痛んだり、手の力が入りにくくなったり、しびれたりすることがあります。

関節外の症状

全身症状として、疲れやすくなり、力が入りにくくなります。また、食欲が減退し、体重が減ることもあります。リウマチ結節と呼ばれる肘の外側、後頭部などの皮下にしこりを生じることがあります。肺に間質性肺炎、肺線維症と呼ばれる問題が起きると、咳が出ることもあります。眼や口が渇く膠原病のシェーグレン症候群が合併することも多くあります。手足の神経に障害が起き、しびれたり力が入りにくくなることもあります。このような関節外の症状を伴う関節リウマチの方は悪性関節リウマチと診断されると、治療費の自己負担分が公費で補助されます。(下に悪性関節リウマチへのリンク)

診断

現時点では関節リウマチを確実に診断できる簡単な検査方法は存在しません。そのため病歴、身体所見、血液検査、画像検査などの結果を総合的に判断して診断する必要があります。関節リウマチの症状は発病初期には個人差が大きく、関節リウマチ以外にも関節の痛みを伴う病気は沢山あるため、発病の初期においては専門医による診察が必要となります。スクリーニングのためには以下の様な分類基準が用いられます。最近は早期に診断し加療することの重要性が認識され、2010年にヨーロッパリウマチ連合とアメリカリウマチ学会が策定した分類基準も用いられています。滑膜炎の有無、自己抗体の有無、炎症反応の有無が重視されます。

1987年に発表されたアメリカリウマチ学会(ACR)の分類基準

以下の7項目のうち4項目以上満たせば関節リウマチと診断する。 ただし、1. から4. までは6週間以上持続することが必要。

  1. 1時間以上続く朝のこわばり
  2. 3個所以上の関節の腫れ
  3. 手の関節(手関節、中手指節関節、近位指節関節)の腫れ
  4. 対称性の関節の腫れ
  5. 手のエックス線写真の異常所見
  6. 皮下結節
  7. 血液検査でリウマチ反応が陽性

検査

血液検査

リウマチ反応(リウマトイド因子:RF)は、関節リウマチの患者の80%で陽性となります。一方、関節リウマチ以外の病気の人や健康な人でも5%程度に陽性となります。そのため、リウマチ反応陽性は関節リウマチを意味しません。抗CCP抗体は関節リウマチ以外の方では陽性率が低く、診断的価値が高いとされています。血沈やCRPは関節リウマチの炎症の程度を知る上で役に立つ検査です。 MMP3は軟骨の破壊が起こっている指標になります。これらは治療の経過を見るために用いられます。

画像検査

リウマチの診断のために、またリウマチの進行や関節症状の進み方の検査として、関節のエックス線(レントゲン)写真を定期的に撮影します。骨のびらんが関節リウマチの初期において診断に重要な所見です。最近はMRIを使って、エックス線写真ではわからない滑膜の肥厚や炎症を変化を見ることも行われています。また、超音波検査(エコー)にて滑膜の肥厚や炎症、骨びらんなどを観察できるようになっています。 リウマチは薬物療法を長期にわたって行うので、くすりの副作用に気をつけるための検査が必要です。また、関節外の腎臓や肺の病変を調べる必要があります。尿検査(たんぱくや赤血球)、血液(貧血、白血球や血小板の減少)、血液生化学(肝機能、腎機能)、胸部エックス線写真を定期的に検査します。

治療

生活の注意

(1)安静

リウマチの活動性が高いときは、微熱があり、疲れやすくなります。炎症の強い部位の関節は腫れや熱感があり、安静にしても痛み(自発痛)、関節を動かすと一層痛みが強くなります(運動時痛)。リウマチは関節だけでなく、全身が消耗する病気です。そのため、全身と関節の安静が必要です。睡眠を十分にとるとともに、昼間も疲れたら昼寝をとることが大切です。リウマチ患者は、30~50歳代の女性に多く、患者がおおむね主婦であることから、午前中の家事が片づいたときや夕食の支度に取りかかる前に臥床して休息を取るとよいでしょう。何時頃に疲れを感じるかがリウマチ活動性の一つの目安にもなります。関節の腫れと痛みがつよいときには、関節の安静を保ち、変形を防止する意味で、補装具で関節を固定することもあります。その場合でも1日に1回は関節可動域を十分に動かすことが大切です。リウマチの活動性が治まり、関節痛が軽いときは、できる範囲で普通に日常生活を送ってよいのですが、その場合でも、疲れがつよくなる、あるいは関節痛がつよくなる一歩手前で休養を取るようにします。

(2)保温

関節を冷やすと関節痛が強くなることがあります。寒い季節はもとより、夏も冷房の風が直接あたるのを避けて、長袖や長ズボン、ブランケットなどで関節部位の保温に気をつけましょう。

薬物治療

関節リウマチの治療に用いられる薬には、抗リウマチ薬(DMARDs)、生物学的製剤 、ステロイド、消炎鎮痛薬(NSAIDs)があります。

(1) 抗リウマチ薬

抗リウマチ薬(DMARDs)(ディーマーズ)は、関節リウマチの原因である免疫の異常に作用して、病気の進行を抑える働きがあります。現在、関節リウマチ治療の第一選択薬は抗リウマチ薬です。しかし、一般に効果が出るまでに1ヵ月から3ヶ月程度はかかるため、消炎鎮痛薬やステロイドを併用することもあります。効果が不十分な場合には複数の抗リウマチ薬を併用したり、他の抗リウマチ薬に切り替えたりすることがあります。抗リウマチ薬には、リウマトレックス(メトトレキサート)、アザルフィジン、リマチル、プログラフ、シオゾール、ブレディニン、アラバ、コルベットなどがあります。ゼルヤンツは内服の抗リウマチ薬ですが、以下の生物学的製剤と同等の効果が期待されています(価格も生物学的製剤と同等です)。

(2) 生物学的製剤

生物学的製剤とは、化学合成された小分子である通常の薬剤に対して、我々の体の中で働いている蛋白分子に似せて、細胞で作られた蛋白製剤であることから名付けられています。炎症を引き起こすサイトカインである TNFαやIL-6などの働きを妨げ、関節の炎症を和らげ、関節破壊が進行するのを抑えます。生物学的製剤は、抗リウマチ薬に対して効果が不十分な場合に使用します。いずれも効果は非常に高く、痛みや腫れが消失してしまう”寛解状態”になる方も多くおられます。この薬は注射(点滴または皮下注射)で投与しますが、その間隔は1週間に2回から2ヵ月に1回までとさまざまです。通院回数やライフスタイルに合わせて治療薬を選択することができます。

※横にスクロールできます。

製品名 エンブレル ヒュミラ シンポニー レミケード シムジア アクテムラ オレンシア ゼルヤンツ
一般名 エタネルセプト アダリムマブ ゴリムマブ インフリキシマブ セルトリズマブ ペゴル トシリズマブ アバタセプト トファチチニブ
製剤特性 受容体融合蛋白 完全ヒト型抗体 完全ヒト型抗体 キメラ抗体 完全ヒト型抗体Fab PEG付加 完全ヒト型抗体 受容体融合蛋白 小分子
:標的 TNF-α,LT-α TNF-α TNF-α TNF-α TNF-α IL-6受容体 CD80/86 JAK
:有効性
:安全性 普通 普通 普通 普通 普通 不明
:継続性 普通 普通 普通 普通 普通 不明
:投与法 皮下注(自己注射可) 皮下注(自己注射可) 皮下注 点滴静注 皮下注(自己注射可) 点滴静注皮下注 (自己注射可) 点滴静注皮下注 (自己注射可) 経口
使用間隔 1週ごと 2週ごと 4週ごと 8週ごと (導入0,2,6,8) 2週ごと 4週ごと(点滴) 2週ごと(皮下) 4週ごと(点滴) 1週ごと(皮下) 毎日
使用量 25mg or 50mg 40mg 50mg-100mg 3-10mg/体重kg 40mg 8mg/体重kg 162mg 500mg~1000mg 10mg
MTX併用 推奨 推奨 推奨 必須 推奨 不要 推奨 推奨
標準量での 3割自己負担 月平均 (50kg計算) 25mg 18,895円 50mg 22,200円* 22,200円* 37,987円 26,861円 (低用量) 22,200円 (高用量)* 22,200円* 27,183円(点滴) 22,200円(皮下)* 32,997円(点滴) 22,200円(皮下)* 22,200円*

(*) 長期処方など高額療養費適応の場合

(3) ステロイド

副腎皮質で作られているホルモンです。炎症を抑える作用が強力で、関節の腫れや痛みを和らげる働きがあります。消炎鎮痛薬や抗リウマチ薬を用いても、炎症が十分に抑制できない場合に用いられます。しかし、ステロイドを中止すると治まっていた関節の腫れや痛みが再発するため、一度使用し始めるとなかなか中止できません。ただし、抗リウマチ薬や生物学的製剤の効果が十分にみられたときは、ステロイドを中止することができます。ステロイドには感染症、糖尿病や骨粗鬆症などを引き起こす恐れがあるため、連用する場合には十分な注意が必要です。主に使われている薬としてプレドニン、プレドニゾロン、メドロール、リンデロンなどがあります。

4)消炎鎮痛剤(NSAIDs)

消炎鎮痛剤は痛みを和らげる働きがあります。即効性があります。しかし、炎症をおさめる効果はほとんど期待できません。 関節リウマチによって関節が腫れたり、骨が壊れたりする変化については効果がありませんので、抗リウマチ薬や生物学的製剤が効いてくるまでのつなぎ役、もしくは壊れてしまったことによる痛みを取るために用います。

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