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リウマチ・膠原病

メトトレキサート(リウマトレックス®)

まとめ

  1. メトトレキサート(Methotrexate, MTX)は関節リウマチの治療で最も使われているお薬です。
  2. メトトレキサートを内服することにより関節の痛みと腫れが引き、長期的には関節の破壊が予防されます。
  3. メトトレキサートの重篤な副作用として骨髄抑制(白血球、赤血球、血小板が減少すること)、間質性肺炎などがあり、注意が必要です。熱や咳など、風邪の様な症状が出た場合、風邪薬を内服して3日経っても改善しなければ来院してください。ひどい口内炎(食べられなくなるほど)が起きたときもすぐに来院してください。
  4. メトトレキサート内服中には妊娠、授乳は禁止です。

このお薬は何のために使われますか?

メトトレキサートはもともと乾癬、癌に用いられていました。ここ20年はそれらの疾患に加え、関節リウマチ、小児リウマチや他の膠原病(全身性エリテマトーデス、筋炎、血管炎など)の治療に用いられています。

どのようなメカニズムで効くのですか?

メトトレキサートは免疫に関係するいくつかの酵素を阻害することが知られています。この効果は活発に分裂する細胞、例えば皮膚細胞、血球細胞、消化管の細胞、免疫細胞などで高いことが判明しています。しかしメトトレキサートがどのように関節炎を改善するかは完全には分かってはいません。

内服の方法は?

週に1-3度だけ内服します。例えば月曜日の朝と夕方だけという様に。関節リウマチに対して、成人では通常週に6-8mgで開始し、副作用が起きなければ週に16mgまで増量します。それより多く処方されることもあります。

効果発現までの期間

症状改善は内服開始後1-2ヶ月で出始めることが多く、最大効果発現には4ヶ月かかることもあります。

副作用

メトトレキサートでもっとも良くある副作用は嘔気、嘔吐、肝機能障害(肝臓の荒れ)です。これらの副作用は内服量が多いほどおこりやすいことが知られています。口内炎、皮疹、下痢、なども認められます。肝障害については肝硬変にまで至ることはまれです。ビタミンの一種である葉酸(フォリアミン)をメトトレキサート内服の翌日か翌々日に内服することにより肝障害は軽減することが知られています。

肺障害も起こりえます。時に重篤となりうる副作用で、元々肺の機能の悪い方、腎臓の機能の悪い方、糖尿病、高齢の方などに頻度が高いことが知られています。咳が続いたり息切れがしたりした場合には担当医にお知らせください。

脱毛が起きることもありますが、内服中止でまた生えてきます。また、このお薬は紫外線への感受性を高めますので、日焼け止めを使用することが望ましいです。

多くの患者さんは以上の様な副作用を全く経験することなく治療を続けておられますし、副作用がでる方も、続けている間に次第に副作用が軽くなることが良く経験されます。

妊娠希望の方においては、少なくとも3ヶ月は内服を中断してください。メトトレキサートは妊娠中も内服は禁止ですが、将来の妊娠の可能性を妨げるものではありません。

覚えておいていただきたいこと

メトトレキサートは指示された通りに内服してください。このお薬は一般的には週に1-2日だけ内服することになります。また、副作用軽減目的にフォリアミン(葉酸というビタミン)を処方されることも多いです。フォリアミンはメトトレキサート内服の1-2日後に内服することになります。メトトレキサートの副作用をチェックするために、血液検査を1-3ヶ月毎にすることも重要です。

もし内服を忘れてしまったら、スキップして次の週まで内服しないで下さい。風邪などで具合が悪くてご飯が食べられないときにも、スキップしてください。手術をするときには、担当医と相談してください。メトトレキサートを中止しても、すぐには関節リウマチは悪くなりませんが、しばらく(2-8週)してからまた関節リウマチが悪くなってくる可能性があります。

アルコールをのむと、メトトレキサートの肝障害が発生しやすくなるかもしれません。ですから特に最初、メトトレキサートの量が決まるまでは、アルコールを控えることをお勧めします。

メトトレキサートを使用中には避けるべきワクチン接種があります。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンは問題ありません。これら以外のワクチン接種前には担当医に確認してください。

お薬の相互作用について

担当医には処方されているお薬や薬局で買った薬、漢方薬、ダイエット用薬品など、内服しているお薬すべてを話すようにしてください。バクタ(抗生剤)や非ステロイド性消炎鎮痛剤(ロキソニンやボルタレンなどの痛み止め)を新たに始めると、メトトレキサートの血中濃度が高まって副作用が出てしまうことがあります。

メトトレキサートの市販後に認められた主な副作用

※横にスクロールできます。

分類 事象名 頻度
主な副作用 肝機能障害、口内炎、倦怠感、嘔気、発疹 1-10%
重篤な副作用 ショック、アナフィラキシー様症状 頻度不明
骨髄抑制 <0.1-5%
感染症 <0.1-5%
結核 頻度不明
劇症肝炎、肝不全 頻度不明
急性腎不全、尿細管壊死、重症ネフロパチー 頻度不明
間質性肺炎 <0.1-5%
肺線維症 <0.1
胸水 頻度不明
中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群 頻度不明
出血性腸炎、壊死性腸炎 頻度不明
膵炎 <0.1
骨粗鬆症 頻度不明
脳症 頻度不明
過敏症 発疹、掻痒、発熱 <0.1-5%
蕁麻疹 <0.1%
血液 好酸球増多 <0.1-5%
出血 <0.1%
低ガンマグロブリン血症、リンパ節腫脹 頻度不明
肝臓 肝機能障害 5%以上
LDHの上昇 <0.1-5%
黄疸、脂肪肝 頻度不明
腎臓 BUN上昇、血尿、クレアチニンの上昇、尿蛋白 <0.1-5%
消化管 嘔気、腹痛、下痢、口内炎、食欲不振、嘔吐、舌炎 <0.1-5%
口唇腫脹、消化管潰瘍、出血 <0.1%
メレナ、イレウス 頻度不明
皮膚 脱毛 <0.1-5%
紅斑、皮下斑状出血、皮膚潰瘍 <0.1%
光線過敏症、色素沈着、色素脱出、痤瘡、結節 頻度不明
精神神経系 頭痛、めまい <0.1-5%
意識障害、眠気、目のかすれ、しびれ感、味覚異常 <0.1%
項部緊張、背部痛、錯感覚 頻度不明
呼吸器 咳嗽、呼吸困難 <0.1-5%
生殖器 無精子症、卵巣機能不全、月経不全、流産 頻度不明
その他 倦怠感、動悸、胸部圧迫感、低蛋白血症、血清アルブミン減少、浮腫 <0.1-5%
膀胱炎、結膜炎、関節痛 <0.1%
耳下腺炎 頻度不明

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