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リウマチ・膠原病

ベーチェット病

ベーチェット病とはどんな病気でしょうか?

ベーチェット病は、ほぼ100%の確率で口腔内粘膜にアフタ(口内炎)性潰瘍を生じ、陰部(男性では陰茎から陰嚢、女性では外陰部から膣内)にも潰瘍が出現します。皮膚には結節性紅斑(1~数㎝大に赤く腫れる)や毛膿炎(にきび)様の皮疹が、眼には前眼部や網膜などにぶどう膜炎を合併します。これら4つの症状を主症状とし、急性の炎症発作を繰り返す疾患です。トルコのイスタンブール大学皮膚科教授フルス・ベーチェット(Hulsi Behçet)が1937年に初めて報告したためベーチェット病と呼ばれるようになりました。

疫学

ベーチェット病はシルクロード病とも呼ばれ、地中海沿岸諸国・中近東から中国、韓国、そして日本で多くみられる病気です。日本国内では北の地方に多いとされ、現在18,000人ほどの患者がいると考えられています。男女差はありませんが、男性には眼病変の重症例や特殊病型の合併例が多く認められます。ベーチェット病の発症年齢は10代後半から30代前半が多いです。

原因は?

現在のところ明らかな原因は不明です。近年の研究によりHLA-B51やA26との関連性や、そのほかの疾患感受性遺伝子(病気の発症と関連性の高い遺伝子)も報告されていることから、遺伝的な関与が原因の一部にありそうです。しかし環境因子(公害や化学物質など)やストレス、または口腔内細菌の関与も指摘されており、今後も原因解明に向けて研究を進める必要があります。

その他の症状

主症状以外に副症状として、関節炎や副睾丸炎、特殊病型といわれる消化器病変、血管病変、中枢神経病変があります。副症状はベーチェット病の発症から数年経過して出現することが多いようです。ベーチェット病を治療するうえで眼病変とともに、生命予後を左右する特殊病型の早期診断と適切な治療がきわめて重要です。

関節炎

関節リウマチと異なり、左右非対称に手首、足首、肘、膝などの関節炎が多く、単関節炎だけを繰り返すことが多い。

副睾丸炎

男性ベーチェット病患者の1~2割程度に認められ、特徴的症状とされています。

消化器病変

回盲部(小腸と大腸の境目付近)の深掘れ潰瘍が典型的な病変とされています。クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患ときわめて類似した症状(腹痛・下痢・血便など)や内視鏡所見を認めることも多く、鑑別診断が困難なケースも散見されます。

血管病変

静脈病変(深部静脈血栓症)の頻度が高く、動脈病変は少ないとされています。しかし動脈病変の大動脈瘤や、肺動脈瘤からの喀血は生命にかかわる重篤な病態となります。

神経病変

頭痛や髄膜脳炎、脳梗塞様の症状で発症するタイプ(急性型)と、急性症状に引き続き、記憶力や理解力の低下、ふらつきや歩行障害、呂律障害などの症状が進行していくタイプ(慢性進行型)に分けられます。特に後者は難治性で、これまであまり有効な治療法はありませんでしたが、早期発見し適切な治療が予後を改善する可能性が出てきました。

診断方法は?

ベーチェット病を診断するための特別な血液検査はありませんが、厚生労働省ベーチェット病研究班の診断基準を参考に診断していきます。4つの主症状すべてがそろったものを完全型ベーチェット病。主症状のうち3つ、または主症状2つ+副症状のうち2つ、または眼病変を含む主症状2つと副症状2つを示したものを不全型ベーチェット病と分類します。さらに合併した臓器病変に応じて腸管型、血管型、神経型に分類され、特殊病型といわれています。

皮膚は刺激に対して敏感に反応し、採血などで針をさした部位が赤く腫れ上がることがあり(針反応)、診断の参考所見として重要です。

治療は?

粘膜や皮膚の病変には副腎皮質ステロイドの外用薬を使って治療します。しかし、症状の強い場合や発作頻度が多い場合、重篤な臓器病変を合併する場合の治療には炎症を抑えるために、コルヒチンや副腎皮質ステロイド・シクロスポリン・メトトレキサートなどの免疫抑制薬を使用します。特に眼病変による視力低下や特殊型(腸管・血管・神経)に対しては強力な治療を必要とします。難治性網膜ぶどう膜炎に対しては生物学的製剤であるTNFα阻害薬(インフリキシマブ)が保険適応となり、良好な治療成績が報告されています。

予後は?

主症状は発作を繰り返し慢性の経過をとりますが、10年ほどたつと徐々に病勢は落ち着き、その後再燃しなくなったり軽度の口内炎のみになったりすることが多いようです。眼病変がない場合、あるいは特殊病型がない場合の予後は良好と考えられます。一方、眼病変(とくに後部ぶどう膜炎)は、ひどくなると失明することもあり、これまでの治療では予後が良いとは言えませんでした。眼科医とベーチェット病専門医による適切な治療が必要となります。眼病変の他に、腸管・血管・中枢神経などに炎症が起きる特殊病型は難治性であることが多く、現在さまざまな免疫抑制療法や生物学的製剤の有効性と安全性が検討されています。

生活上の注意点

これまでの経験から、季節の変り目や梅雨の時期、感冒後に症状の悪化する場合が多いようです。このような季節には十分な休養と睡眠をとり、体調管理に努めましょう。食生活では刺激物を避けバランスのとれた食事を心がけて下さい。肉体的あるいは精神的ストレスもできるだけ減すことなどが重要とされています。

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