基礎研究の概説や成果報告

帝京大学医学部内科学講座 リウマチ・膠原病研究室での近年の研究内容を紹介します。

自然免疫炎症の分子機序とその疾患との関連

a) inflammasomeと動脈硬化症

上記の通り、動脈硬化は慢性炎症性疾患として理解されている。様々な刺激によるpattern recognintion receptorsによる炎症の開始と持続は重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた。最近、IL-1βの切断活性化はinflammasomeと呼ばれる多分子複合体の形成によることが明らかとなった。特に尿酸結晶によるcaspase-1活性化においては、NLRP3、ASCを含むNLRP3 inflammasomeが重要な役割を果たしている。我々はこれまでは完成した粥状硬化においてのみ認められると考えられていたコレステロール結晶を、動脈硬化巣の形成の初期から検出した。次にコレステロール結晶はIn VitroにおいてもInVivoにおいてもinflammasomeおよびIL-1依存性の炎症を惹起することが明らかとなった。さらに我々はNLRP3inflammasomeがマウスにおける動脈硬化に関与しているかを検討するために、LDL受容体欠失マウスに野生型コントロールのC57BL/6、またはNLRP3、ASC、IL-1αβ欠失マウスよりの骨髄を移植しキメラマウスを作成し高脂肪食を与えた。その結果、動脈硬化を発症したNLRP3、ASC、IL-1αβ欠失骨髄移植マウスにおいては大動脈洞における動脈硬化の減少が認められ、以上よりNLRP3 inflammasomeが動脈硬化発症に関与していることが示された。

b) 善玉コレステロールを用いた炎症性疾患の治療

動脈硬化は動脈壁の内膜における脂質の蓄積による代謝性疾患であると同時に、慢性炎症性疾患としての側面を持っている。近年の研究により、自然免疫はその炎症において中心的な役割を果たしていることが判明してきた。わたしたちは人工合成した善玉コレステロール(rHDL)の投与により、コレステロール結晶などによるinflammasomeの活性化が抑えられることを発見しました。現在、川崎病モデルマウス、関節リウマチモデルマウス、などを使用して生体内でも自然免疫炎症がrHDLで抑えられるかを検討しています。

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