腎臓グループ/研究室の紹介

臨床

腎グループの臨床分野は4 つに大別される。蛋白尿・血尿などの腎炎・ネフローゼ症候群、水電解質・酸塩基平衡・輸液の分野、急性腎不全・慢性腎不全・体外循環療法、そして高血圧の分野である。いずれもが有機的に結びついており、腎臓専門を標榜する以上、どの一つも決して軽視することが出来ない。実際、他科からの相談にも高度なレベルで対応する必要がある。なかでも腎センターの業務が大きな比重を占める。

腎センターの業務は主に血液透析患者の治療となるが、最近では体外循環療法全般にわたっている。すなわち血漿交換療法、持続血液濾過療法、LDL アフェレシス、ビリルビン吸着療法、エンドトキシン吸着療法、白血球除去療法などの需要も多く、内科の他部門および他科からの要請も増加の一途である。最近では急性肺障害に対するエンドトキシン吸着療法の有効性が注目されている。新たに透析療法を導入する患者さんの数は年々増加し、最近は50 名を超えるようになっている。患者さんへの初期教育は当院の腎センターで行い、安定したところで通院しやすい近隣の透析専門クリニックにお願いするようにしている。このように透析ベッドを回転しながら、1 日平均20 名の患者さんを2 交替制で診療している。このためコメディカルは多忙を極めており、医療事故が起こらないように細心の注意を払っている。

腎臓内科の主たる病棟は8 階東であり25 名前後の患者さんがおられる。他病棟の総合内科にも、常に腎グループの医師を配している。週1 回のプレミーティングと教授回診を実施している。また腎臓内科以外の腎疾患については随時にコンサルテーション、往診および出張透析などの診療を行っている。腎臓内科の特殊技術の一つである針式腎生検も年間70 例を超え、病理学教室との定期的な合同カンファランスでは診断困難な症例の詳細な検討を行っている。

外来は、糸球体腎炎、ネフローゼ症候群にとどまらず、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満などの生活習慣病に基づく腎臓病が急増している。最近注目されているメタボリックシンドロームの最終像は心血管疾患、脳血管障害のほか腎臓病が挙げられ、今後ますます重要な領域となると思われる。ここ数年の慢性腎臓病(CKD)の啓発運動の成果もあって、多くの患者さんが、尿異常や腎機能に関心を持つようになり、外来の患者数は増加の一途である。5 区の医師会を中心にCKD 診療地域連携を強化することとし、実際板橋区医師会とのCKD 連絡協議会が再開された。また2014 年1 月から患者向けに帝京大学CKD 教室を年4 回開催している。医師のみならず栄養士、薬剤師、看護師からの講演は非常に高い評判を得ている。
透析に至る以前の状態の患者さんはもちろん、維持透析を受けている患者さんにも十分な診療を行えるように努力してきた。帝京大学医学部附属病院は城北地区の中核病院であるため、たまたま透析している患者さんが、他科に入院する機会が多い。したがって関連クリニックとの連携はきわめて重要である。関連病院として、地域医療振興協会練馬光が丘病院、東京都健康長寿医療センター、上尾中央総合病院、堀ノ内病院、中島病院、東京北医療センター、岩槻南病院、東川口病院、東京腎泌尿器センター大和病院に腎臓内科の常勤医師を派遣している。さらに透析クリニックの関連病院は多方面に渡り、災害の時などの有事の時の対応を積極的に行っている。関連地域は東京城北部から埼玉へと広がり、最近では埼京地区というくくりで地域連携を構築している。

教育

学生に関わる授業としては、5 年生のBSL 実習が大きい。学生が8 階東病棟や腎センターに2 週毎に来るだけでなく、腎回診にも立ち会わせて説明している。また腎関連のBSL セミナーを4 コマ担当している(水電解質、酸塩基平衡、腎炎、高血圧の話)。腎臓学はえてして理解が難しいなどの声も聞くが、決してそのようなものではなく、基本的な理論や理屈を飲み込めば、むしろ暗記が不要な応用のきく学問である。腎グループ全員が理念と情熱をもって腎臓学の面白さを学生や研修医に伝達できる伝道師となるように努力している。そのことが現在および将来の腎臓内科医の需要増大に応えられることになり、結果として大学が社会に対する責任の一端を果たすことになると確信している。

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